最賃審議会の答申を踏襲する地方最賃審議会ではなく、 全国一律をも視野においた画期的引き上げ
2024年度地域別最低賃金の改定では、中央最低賃金審議会が示した目安額50円(A ~C ランク共通)を上回る引き上げが27県で答申され、全国加重平均額は1,055円 (昨年度1,004円)となりました。
とりわけ、徳島地方最賃審議会は神戸や大阪への人材の流出を防ぐために「地域間格差を是正するための独自の算定方式」を行い、また県に対して「企業等が賃上げを実施した際にその経費の一部を補填する支援金を創設すること」を要請して最低賃金を84円引上げて980円としました。従来の中央最賃審議会の答申を踏襲する地方最賃審議会ではなく、全国一律をも視野においた画期的引き上げとなりました。
「連合徳島ニュース №335」(要旨)
・8月29日、公益見解により現行の896円にプラス84円の 980円で結審した。
・昨年、徳島県は47都道府県中45番目となり地元紙に大きく報道された。2024年1月19日に開催された、雇用政策協議会(地方版政労使会議)の場で後藤田知事が「徳島県の最低賃金は全国ワースト2であり働き手の流出を止めるためにも賃金の引上げが必要」と訴え、その後もあらゆる場で最低賃金の引上げについて触れられたことで県民の関心が高まった。
・今年の審議会には県知事、労働者4人、徳島弁護士会から要請書がだされ、「積極的な引き上げ」「早期に1500円に引き上げるべき」「大阪と徳島のバイト料の差」「看護師給与の淡路島との差」「審議会の公開」等の意見陳述が行われた。
・その後も徳島県、徳島県議会各会派、徳島市長会、徳島町村長会から労働局長、審議会の会長宛に要請書が提出されるなど、関心が高まったことにより異例の多さとなった。
・労働者側は第2回の専門部会において、連合リビングウエッジ(連合が独自に算出した、労働者が最低限の生活を営むのに必要な賃金水準)において、徳島県で自動車を所有していなくとも必要な時給額1060円、現行最低賃金896円から164円の引き上げが必要であると提示。
・使用者側は経団連による春闘妥結平均2.9%922円、26円の引き上げが妥当であると提示した。その後、公益と労働者側、公益と使用者側、労働者側と使用者側の話し合いを繰り返された。
・公益見解として、「第3回専門部会資料(主要統計資料・追補版)による、①労働者の生計費②労働者の賃金③通常の事業の賃金支払い能力等を総合的に判断し、徳島が全都道府県中、中位より上に位置し、2023年度地域別最低賃金のおおむね中位の930円に目安額50円をプラスした980円にすべきと判断に至ったと述べた。・公益見解を受けて専門部会、本審で採決し、過半数の賛成により、896 円から84円引き上げ980円とするよう労働局長に答申した。
・今年の審議会は、①県民の関心が高まったこと②目安ありきではなく統計を用いた徳島県の立ち位置 を基準に判断したこと③経営側にも引き上げ前向きな委員がいたこと等で過去最高の引き上げ額となったが、労働者側はこれまでも、労働人口流出を防ぐためにも最低賃金の引き上げが必要と訴えてきた。引き続き労働力確保、魅力ある徳島になるよう取り組んでいく。
最賃引き上げは政治(政府)の責任
・84円引き上げた徳島県で、NHKが調査を行いました。経営に影響があると答えた企業は84%にのぼり、賃上げの課題として「価格転嫁」が困難と答えた企業は64%、行政の支援の必要性については全体の79%が必要だと答えています。補助金や支援金、給付金など財政的支援を求める回答が最も多くなっています。
・岸田政権は、最低賃金の引き上げを労働政策の課題としてすすめてきました。ユニオンは早期の1,500円の最低賃金を求めていますが、今年度の全国の最賃引き上げの現状を見ると、運動によって加速化していく流れを感じることができます。
・しかし、NHK調査による徳島県の中小零細企業の回答は自力での引き上げが極めて困難であることがわかります。
・ユニオンの主張の一つは、税の公平分配すなわち大企業の600兆円の内部留保に課税することにより最低賃金引き上げの財源を確保すること、もう一つは賃上げを含むコスト上昇分の価格転嫁を大企業が受け入れることが必須です。
・労働組合として、「内供留保」「価格転換」を強く政府や市町村に申し入れることも大切です。
Write a comment